ラオス国日本人会
Association of Japanese Residents in Lao P.D.R.
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2008年9月号目次
巻 頭 言
・2008年度会長
日本人会活動報告
・植樹祭
コ ラ ム
・
メコン河観測史上最高水位
・
ロンの新米の味は?
・
乾杯が始業ベル???
・
ラオスの経済・社会・産業基盤
・
第一回ラオス柔道選手権大会
・
日本人会テニス大会
編 集 後 記
コ ラ ム
2008年8月の熱帯低気圧Kammuriによる
ラオスの災害について
~~メコン河Vientiane(KM4)水位観測所で観測史上最高水位を観測!~~
2008年8月熱帯低気圧Kammuriによる豪雨の概要
■気象状況
台風9号Kammuriの進路 メコン河委員会HPより
8月6日~14日の総降水量 メコン河委員会HPより
2008年8月5日に南シナ海北部で発生した台風9号は、その後西進し、8月12日に中国・広東省に上陸、ベトナムのハノイ付近で熱帯低気圧に変わりましたが、ベトナムでは死者100人、行方不明者50人以上、中国でも死者37名、行方不明者40名以上に達し、南シナ海北部沿岸各地に大きな被害をもたらしました。
さらに熱帯低気圧kammuriはベトナム北部を西進し、ラオスの北部を通過し、中国雲南省へ抜け、ラオス北部から中部にかけて甚大な被害を及ぼしました。熱帯低気圧Kammuriの強い雨雲は、2008年8月6日から8月14日にかけてラオス北部・中部で長時間にわたり強い雨を降らせ、9日間の総降水量が平均で100mmから200mm、多いところでは、ラオス気象水文局のホエイサイ雨量観測所で382.8mmを観測するなど記録的な大雨となりました。この影響で、中部・北部山岳地帯では土砂災害が各所で発生するとともに、メコン河中流域のルアンパバーン、ビエンチャン、カムアン、ボリカムサイ、サワナケートで大規模な浸水被害が発生しました。
■水位状況
【ルアンパバーン】
ルアンパバーン水位観測所では、8月9日に警戒水位(17.50m)に達し、その後水位は急激に上昇、翌日10日には洪水水位(18.00m)を超え、さらに水位は上昇を続け、8月13日に洪水水位を2.38m上回るピーク水位20.38mを記録しました。
また洪水水位を上回る状況が6日間続き、世界遺産ルアンパバーン市内のメコン河およびカーン川沿いでは、大規模な浸水被害が発生しました。
【ビエンチャン】
ビエンチャン(KM4)水位観測所では、ルアンパバーンに遅れること2日後の8月11日に警戒水位(11.50m)に達し、その後水位は急激に上昇、翌日12日には洪水水位(12.50m)を超え、さらに水位は上昇を続け、8月15日に洪水水位を1.17m上回るピーク水位13.67mを記録しました。
この水位は1966年にビエンチャン市内が大規模冠水したときの水位よりも約1.1m高く、観測史上1位となり、ビエンチャン市内は緊迫した状況となりました。また、洪水水位を上回る状況が7日間続き、メコン河沿いのノングダー地区、カオリアオ地区、ボーオー地区などの低い土地で、大規模な浸水被害が発生しました。
→
カーン川の状況(ルアンパバーン2007年12月22日)
カーン川の状況(ルアンパバーン2008年8月12日)
※
警戒水位:
住民に対し注意喚起を行う基準となる水位です。日本では、水防団が活動の準備を始める基準の水位となります。
洪水水位:
低いところでは氾濫・浸水が始まる水位です。日本では、自治体が避難勧告を出すための目安の水位となります。
メコン河流域における被害状況
■一般被害状況
ラオス全国の被害状況は以下のとおり
(ラオス防災委員会より入手したデータを筆者が取りまとめたもの)
浸水村落:
863
村
被災世帯:
107,584
世帯
浸水面積:
639,738
ha
被災人数:
145,569
人
人的被害
住宅被害(棟)
死者
6
床上浸水
107,548
行方不明者
不明
床下浸水
不明
負傷者
不明
全壊
不明
半壊
13
一部破損
不明
移動
8,174
計
6
計
115,735
※複数の県が未回答のため、数値は変更することがあります。
床下浸水状況(ルアンアムター、8月9日)
床上浸水状況(ルアンパバーン、8月12日)
強風で倒れた木がトゥクトゥクを直撃
(ルアンパバーン、8月12日)
床上浸水状況(ビエンチャン、8月14日)
■施設被害の状況
【道路】
国道13号北のカシー~プークーン数箇所において、土砂崩れが発生。
国道3号において、道路法肩崩れ、陥没、土砂崩れが多数箇所で発生。
国道13号南のビエンチャン-タケク間で数箇所の冠水により通行止め。
国道11号線のカオリアオ地区とサントーン郡の間で冠水により通行止め。
ビエンチャン特別市内1号線タドゥア通りで冠水により通行止め。
メコン河沿いの道路では土嚢積み作業などの水防活動のため通行止めが発生。
その他北部の幹線国道については現在のところ情報なし。
国道3号冠水状況(ルアンナムター、8月9日)
道路法肩崩れ状況(ルアンナムター、8月9日)
国道13号土砂崩れ状況(8月9日)
ビエンチャン1号線冠水状況(8月14日)
【河川】
ビエンチャン港(Km4)およびカオリアオ港において大量の土砂堆積。
ビエンチャン特別市のメコン河河岸の護岸が18箇所(総延長L=12.94km)で浸食、崩壊。
ビエンチャン特別市のメコン河堤防法尻からほぼ全川にわたり漏水が発生。
護岸崩壊状況(カオリアオ地区)
堆積物状況(ビエンチャン港)
港湾施設被災状況(カオリアオ港)
護岸崩壊状況(シサタナック地区)
■住民避難等の状況
メコン河沿いのカオリアオ地区、ダーンカム地区、ホアイホム地区では、500世帯が付近の小学校へ避難しました。
■防災体制
8月12日朝にブアソーン首相主宰の緊急閣議が開催され、12日に首相命令により全国規模での防災体制の整備が発表されました。(同月8日の首相令「洪水からの影響の防止と対処に関する首相指令」)
これを受けて、ビエンチャン特別市はすべての政府職員や地元住民、および建設業者の協力により土嚢の積み上げや堤防の積み増し作業を実施しました。土嚢積み作業は、省庁職員だけでなく住民総出による8月16日まで徹夜で行われました。
■総被害額
約41,804,070,260 KIP(約5.5億円)
(9月12日時点、ラオス防災委員会より入手したデータより)
水防活動
■土嚢積み工
首相命令を受けたビエンチャン特別市は、ビエンチャン市街地を洪水から守るため、すべての政府職員、警察、軍、学生、地元住民を総動員し、ボーオー地区からカオリアオ地区まで約19kmにわたる土嚢積みを実施しました。また、トラックや重機を持っている企業や、一般個人にも土砂運搬の協力について呼びかけを行い、メコン河沿いの一般交通を排除、スムーズな水防活動ができるよう努めました。また、浄水場、国際空港、変電所などの重要インフラ施設でも、機器を浸水から守るため、土嚢積みを実施しました。
土嚢積み状況(タドゥア通り)
政府職員と住民協働による水防活動状況
JICA専門家による水防工法レクチャー
JICA専門家による土嚢づくりレクチャー
■シート張り工
シブンフアン地区では、護岸浸食により護岸の立木が倒壊し流出しました。さらなる浸食を防ぐため、シート張り工が行われました。
■排水ポンプ稼働
ビエンチャン特別市は、タドゥア通りKM4地区の内水排除のため、ポンプ(エンジン駆動)1台を出動させ、浸水被害を最小限に食い止めました。
シブンフアン地区シート張り工状況
排水ポンプ稼働位置
■上空からの被害状況調査
8月15日メコン河水位ピーク時にラオエアーのヘリコプターAS-350をチャーターし、ビエンチャン特別市、カオリアオ地区からナムグム川との合流点まで、上空から被害状況調査を行いました。メコン河沿川の村落は、ほぼ全村が冠水しており、被害の甚大さを把握することができました。また、ラオス側よりもタイ側のほうの氾濫面積が広いことも確認できました。
ノングダー村冠水状況
タイ側氾濫状況
ナムグム川との合流点付近の村冠水状況
シェンクワン村付近
■1966洪水との比較
2008年8月洪水によるメコン河水位は、1966年にビエンチャン市街地がほぼ全域で冠水したときの水位よりも1.1m以上高いものでした。1966年の洪水の状況を覚えているビエンチャン住民は、このときの悪夢がよみがえったそうです。
ビエンチャン特別市をとりまくメコン河の堤防は、再度災害防止を目的にこのときの水位を基準にして築堤されており、今回の洪水ではぎりぎりのところで最悪の被災を免れました。しかし、堤防の老朽化や河岸浸食も進行しているため、いたるところで堤体から漏水が発生しており、大変危険な状態が続きました。
改めて、ビエンチャンを洪水からまもるための計画づくりが必要不可欠となる時期が来ているようです。
1966年洪水時のビエンチャン市街地冠水状況
ワッタイ国際空港
ラオス公共事業運輸省派遣JICA専門家
村 岡
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