Association of Japanese Residents in Lao P.D.R.



2008年6月号目次

・2008年度会長

・2008年度新役員の紹介

・日本人会定期総会

・先生方の紹介
・新入生紹介

メコンで素振り
ロケット・フェスティバル
第5回日本語スピーチ大会
LJCにほんごまつり
日本人会テニス大会

コ  ラ  ム

ロケット・フェスティバル(ブン・バン・ファイ)


 ラオスでは毎年5月から6月にかけてロケット・フェスティバル(ブン・バン・ファイ)が各地で催される。ちょうど乾季から雨季に入る時期にあたり農業に関するお祭りだと思われる。一説では雨乞い、豊作、子孫繁栄の儀式が変化したものだという。毎週日曜日にどこかで行われているらしいが、見に行こうと思ってもいつどこで行われるのかなかなか分からない。ラオスでの情報伝達は口コミの世界なのだ。

 今年は5月11日に妻の友人の出身地でかなり大きなロケット祭りがあるというので行くことにした。場所はビエンチャン市内から約40km北、ナム・グム(グム川)沿いのリンサンという村。午後2時から始まるというので、12時に現地に到着。帰りは妻の友人が運転してくれるので、安心してビールを飲みながら、弁当を食べる。完全にラオ・スタイルのピクニック気分だ。

 まだかなり時間があるので、村はずれのお寺にある貴重な仏像を拝みに行った。歩いて往復30分ぐらいだというのが、実際は片道で30分ぐらいかかった。ピカピカの仏さんに挨拶をして村に戻ってみると、もうロケットの打ち上げが始まっていた。何十発も打ち上げるので、別にあわてることはない。出店を冷やかしなら、いい場所を探していると、うまく、日本人のグループに出会ったので、そこに合流した。

 ロケットは大きいのは10mくらいの竹にくくり付けてあり、小さいのは10cmくらいで、手に持って点火して飛ばす簡単なものもある。今回の一番大きいのは火薬が1トンだといっていた。

 発射台に載せられたロケットは、いかにまっすぐ高く飛ぶかでその技術が競われるらしい。まっすぐに上がっていくと観客は「ガーム!、ガーム(美しい)」といって手をたたく。フラフラしてはいけないのだが、なかなかそうは行かない。昨年、別の村で見たときは少し上昇して真横に角度を変え、私たちの頭の上を通過していった。発射されるときはよく見ていないとかなり危険である。

 10分ほどの間隔を置いて、次々とロケットが発射される。ボリュームをいっぱいに上げて、音楽がかかり、ダンスも始まる。このお祭りは出店、ダンス、ロケットの打ち上げで成り立っている。とはいいながら、地元の人は自分の家でビールを飲んで音楽をかけ、庭で踊っている。ロケットは発射音を聞くだけだ。

 さて、本日のメーン・イベントは、100万グラム、すなわち火薬1トンのロケットの発射である。発射時間を聞いてみると3時半頃だという。もちろんこれはラオス時間なので、実際は4時か5時だ。あいにく3時頃から雨が降り出し、1時間ほど中断した。雨の間は私たちもダンスに興じる。

 ラオスでは楽しいことがあると必ずダンスが始まる。そして、今日のお祭りは無礼講なのだ。この祭りと、ボートレースは特別だというが、そんなことはない。私のところはビエンチャン・ハイスクールの中だが、少なくとも、「先生の日」、「こどもの日」、「中間試験が終わった日」、「夏休みが始まる前日」、「新学期が始まった日」 などは教職員で無礼講をやっている。

 さて、雨がやんだ。しかし、5時になっても1トンロケットは発射されそうにない。なんでも、予定時刻があるのではなく、ほかのロケットを全部打ち上げてから、最後に打ち上げるらしい。この時刻になると見物人の数はかなり多くなり、数万人という感じだ。人口数千人の村が10倍に膨れ上がっている。

 そして、ほぼ6時、1トンロケットが発射台に運ばれた。発射台にロープをかけて10人がかりで引き上げる。しかし、10人ほどで持ちあがるのだから1トンということはあり得ない。ラオス人には悪いが、彼らは計算が苦手だ。「多分、位取りを間違えていて、実際は100kgだろう」 と言うと、そうではないらしい。「100kg以上あるので端数を切り上げて、1トン」 だそうだ。なるほど、1トン級ということか。納得。

 1トン級ロケットはさすがに発射台にセットするのに時間がかかる。30分ほどかかってやっと終わった。

 係員が遠ざかって、点火! あがった!

 ロケットは黄昏どきの空に向かってまっすぐ上っていく。と思いきや、大きく弧を描いて向きを変え、川の方へと落ちていった。「ボ・ガーム(美しくない)」という声と拍手でお祭りは終わった。

 夜、ラオ・スター・チャンネルで、この模様を録画で放映していた。テレビの画面で再確認すると、本当にすごい人出だ。番組の最後は、やはり、1トン級ロケットで、墜落していくロケットに「ボ・ガーム・ノ(美しくないネ)」というコメントが付けられて番組は締めくくられた。
吉  田